2019年11月30日土曜日

文学賞三冠

 若手に与えられる芥川龍之介賞、野間文芸新人賞、三島由紀夫賞の三賞を制覇しているのは2019年11月現在以下の五人。

・笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』『なにもしてない』『二百回忌』
・鹿島田真希『冥土めぐり』『ピカルディーの三度』『六〇〇〇度の愛』
・本谷有希子『異類婚姻譚』『ぬるい毒』『自分を好きになる方法』
・村田沙耶香『コンビニ人間』『ギンイロノウタ』『しろいろの街の、その骨の体温の』
・今村夏子『むらさきのスカートの女』『星の子』『こちらあみ子』
 (いずれも芥川賞、野間文芸新人賞、三島賞の順)

 芥川賞をもらうと若手の枠から外されて他の二賞はもらえなくなるのが通例なので、三冠を達成できるかどうかは実力というよりは芥川賞の与えられるタイミングによるところが大きく、新人賞受賞作で芥川賞をもらったりすると(沼田真祐『影裏』、石井遊佳『百年泥』、若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』など、近年多くみられる)、自動的に野間文芸新人賞、三島賞はもらえなくなる。他に若手のうちにもらえる可能性のあるのは泉鏡花賞、織田作之助賞、芸術選奨新人賞、紫式部文学賞(これは女性だけ)あたり。2019年に休止した川端賞も絲山秋子、田中慎弥、青山七恵らが比較的早い段階でもらっている。まあ、野間文芸新人賞、三島賞がもらえなくなるからといって、いつまでも芥川賞をもらえないよりは早々にもらえるに越したことはないだろう。

2019年11月読書記録

 何とはなしに手に取った『ギンイロノウタ』がよくて、村田沙耶香強化月間のようになってしまった11月、『コンビニ人間』『地球星人』は既読のため、残すは『マウス』『ハコブネ』『タダイマトビラ』に最新刊『生命式』のみになった。概して初期のちょっと異様な少女視点のものがいい感じ。いちばん好きだったのは『しろいろの街の、その骨の体温の』で、これは三島賞。『ギンイロノウタ』が野間文芸新人賞で、こうきれいにいい作品で賞がとれているのも珍しい。
 『パーク・ライフ』は芥川賞受賞の表題作よりも「flowers」が妙によく、印象に残った。元旦の人物造形がよくないか。純文学出身の作家が初期に書く、芥川賞受賞前後(とろうがとるまいが、そういう時期)の中編が好みなのかもしれない。中堅より後になると不思議とそういうものは書かなく、ないしは書けなくなるように見える。

・この名作がわからない 小谷野敦、小池昌代●
・パーク・ライフ 吉田修一
・美しい夏 チェーザレ・パヴェーゼ(河島英昭)▲
・大学教授のように小説を読む方法[増補新版] トーマス・C・フォスター(矢倉尚子)●
・愛という名の支配 田嶋陽子●
・ダイヤモンド広場 マルセー・ルドゥレダ(田澤耕)●
・デッドライン 千葉雅也
・ギンイロノウタ 村田沙耶香●
・授乳 村田沙耶香
・星が吸う水 村田沙耶香
・しろいろの街の、その骨の体温の 村田沙耶香●
・殺人出産 村田沙耶香
・消滅世界 村田沙耶香
・エスタブリッシュメント 彼らはこうして富と権力を独占する オーウェン・ジョーンズ(依田卓巳)●
・犬婿入り 多和田葉子●
・かかとを失くして/三人関係/文字移植 多和田葉子