小口研磨本を避けるようになってから、書店での買い物が楽しい。
小口研磨とはその名の通り書籍の小口(広義には本の背の部分を除いた三方の辺)を研磨することを指し、書店に並んだ書籍が出版社に返品されると、再出荷に備えて汚れを落とすために小口が研磨される。ハードカバーの本が研磨されることはほとんどないが、ソフトカバーの本(特に文庫や新書)では返本されると大抵は研磨されてしまうので、書店に並んでいるソフトカバー本は新刊や重版分を除いた大部分が小口研磨本になる。
研磨されていても汚れが落ちている方がいいではないかという向きもあるかと思うが、研磨本と非研磨本を並べてみると一目瞭然で、頁の端がぎざぎざに削れているのと真っ直ぐに裁断されているのとでは見た目が全く異なるし(非研磨本のが圧倒的に美しくない?)、手触りも全然違う。のだけど、世の中の大多数はそのようなことは気にも留めないらしく、この話をすると驚きとともに憐れまれることが多い。
確かに小口研磨本を避けることには面倒が付きまとうが、良い点もいくらかある。まずもってきれいな状態で本を読めることは気持ちがいい(読書中小口は常に視界に入っているし、親指で押さえつけてもいる)。また、本を買うペースがうまく抑制されるということもある。わたしの読書ペースは週に2~3冊、月にすると十数冊ほどで、きれいな本を見つけたときにだけ購入することで積ん読の蓄積ペースがだいぶ緩まった。何よりのメリットは書店での買い物が楽しくなることで、目当ての本をきれいな状態で見つけた時の喜びは宝探しのそれに似ている。以前はAmazonで購入すれば検索→ワンクリックで済むのだから、買いたい本が決まっているのを書店の広い棚の中から探し出すのが面倒で苦痛だったけど、ネット書店では小口の状態が分からないという実利的な面、宝探しのようで楽しいというエモーショナルな面両方の理由が見つかると、それは途端にわくわくと楽しいイベントへと様変わりした。
やっかいなのは店頭でなかなか見つからないマイナー本で、そもそも店頭在庫自体が僅少なのでその中できれいな状態のものを見つけるのは至難の業である。どうしても見つからない場合は諦めてネット書店で買い求めるのだが、まあ大抵は小口研磨本が届けられてがっかりすることになる。